抗菌は、菌をある一定期間増やさないようにする事を言います。
他に、除菌、殺菌、滅菌、消毒などがあります。
抗菌加工製品なども広く普及し、表面の細菌を増殖させないように加工されている製品を抗菌加工製品と言います。
日本産業規格(JIS)では、未加工の製品の表面と比較するテストを行い、細菌の増殖割合が1/100以下である場合にのみ、その製品に抗菌効果があると想定しています。
抗菌製品は現在、社会に広く普及されていますが、正しく抗菌基準を超えているものは皆さんが思っているよりも実は少ないのです。
実際のところ、効果が不明確な商品も広く販売されており、安全性にも疑問を感じる方が多いのも事実です。
何を選ぶべきなのか悩むところですが、抗菌製品技術協議会のSIAAマークの製品がついている製品を選ぶのがおすすめです。
▸ SIAAマークについて
INDEX
「抗菌」とは
抗菌は、除菌や殺菌、消毒と混同しがちですが、菌やウィルスへの効果が長く、したがって頻繁に買い替える必要がないので、長い目で見るとコストパフォーマスが良いのが抗菌と考えるとよいでしょう。
製品表面などに製品表面の菌を増殖させないよう加工した製品を、抗菌加工製品と呼びます。抗菌はあくまで菌に限定され、カビなどの真菌やウィルスはその対象ではありません。
抗菌は、ウィルスなどではなく、あくまでも「菌」の「繁殖を抑制」する事です。シンプルに、加工して菌が繁殖しにくい環境を作り出しているのです。
ただし、除菌や殺菌とは違って、直接「菌」を殺傷することは意味していません。菌の繁殖を抑制したり、阻害したりすることを目的としています。
世界を震撼させたコロナ禍によって、世界中で清潔について意識するようになり、それに伴って抗菌製品の需要が高まりました。
生活の中に抗菌製品がかなり浸透し、トイレの便座をはじめドアノブなど、あらゆる製品で「抗菌」マークを目にする機会が増えてきているのを、あなたも気づいているのではないでしょうか。
1-1.抗菌、抗ウィルス、抗カビは違う!目的に合わせて対策に役立てよう!
量販店にも、様々な抗菌グッズが販売されています。
ところで「抗菌」とは、実は学術的には”菌に対する全ての効果“をさします。
しかし、一般的には「抗菌加工された製品」という意味でつかわれることが多いことばです。抗カビや抗ウィルスも同じです。
さてこの抗菌などをうたう様々なグッズでは、どんな加工がされているのでしょうか。
また、「抗ウィルス」、「抗カビ」についてもそれぞれ知っておきましょう。
抗菌加工の製品には、表面に菌が嫌がる成分が含まれている
抗菌加工されている製品では、主にその表面に、細菌の増殖を抑える加工がされています。
もし、製品の表面に菌がついてしまったとしても、増殖しにくい環境をつくってあるというわけです。
つまり、ついてしまった菌を直接殺したり、取り除くような効果はありません。
抗菌加工されていない製品では、菌がつくと、適度な水分などがあれば、菌は死ぬことなくどんどん増殖してしまいますので、そこに手などが触れるたび、その菌が手につき、また別のものに触ることで菌が移って増えていってしまいます。
そう考えると、公共交通機関などの手すりやつり革、公園のベンチや遊具などのような、みんなが共同で使うものに抗菌加工マークがあれば、安心して使用できますよね。
では、抗菌加工とはどんな加工方法なのでしょうか。
プラスチック製品の場合は、成型時に材料を加熱するプロセスがあるので、その時に抗菌剤を一緒に混ぜる方法や、表面に薬剤をコーティングする方法が一般的です。
一緒に混ぜる方が薬剤の使用量がどうしても多くなりますので、表面コーティング方法よりコストがかかるのが特徴です。
まな板のようにキズがつくことが前提の製品の場合は、この材料を一緒に混ぜる工法が取られます。
金属製品の場合は、ステンレスのように金属自体に抗菌効果があるものもありますが、そうでない場合は抗菌効果のあるメッキ処理やコーティング処理が行われます。
布など繊維の場合は、1本1本の繊維に接着効果のあるバインダーをつけ、抗菌剤を付着させたり、抗菌作用のある酸化チタンや銀などを直接繊維に織り込むなどの工法があります。
ただ、注意したいのは、例えば抗菌の布巾を使ってテーブルを拭いた場合。抗菌作用は布巾に対して効果があるものなので、その布巾でテーブルを拭いたとしても、テーブルが抗菌されたことにはならないという点です。
「抗菌」と銘打てるJIS規格とは
抗菌グッズ自体は30年以上前からすでに存在し、様々な製品が販売されていました。
しかし、当時は特に基準がなかったので、効果がないものはもちろん、効果がありすぎて使うことで皮膚炎などを起こしてしまうような強い薬剤が添加されたものでもふつうに店頭に並んでいる状態でした。
社会問題化したこともあり、1990年代後半にやっと抗菌加工製品ガイドライン(経産省)や「抗菌についてのJIS規格ができたのです。 このうちJIS規格では、国際規格であるISO(ISO 22196)をベースにして、「繊維」「光触媒抗菌加工材料」「それ以外」という3つの製品カテゴリーで、どの細菌に対してどの程度の抗菌性能があるといえるかを規定しています。
しかし、3つのカテゴリーで規定している細菌は、黄色ぶどう球菌、肺炎桿菌、大腸菌のうちいずれか2種。
つまり、すべての菌が対象、というわけではないのです。
特にカビなどの原因である真菌や、ウィルスについては対象外になっているのは覚えておきたいもの。
また、抗菌加工を施すために使う薬剤は、毒性がない、とはされていますが、アレルギーなど何らかの影響が出るとも限らないため、何でも口に入れてしまう赤ちゃんがつかうような製品では、抗菌加工をあえてしていないものもあります。
抗菌加工された製品の代表的なものとしては、まな板や冷蔵庫、マスクケース、食器洗い用スポンジや便座など、日常的に人がよく手に触れるものに多いですね。
一方、食器や医療器具など、人体への影響が懸念されるような製品については、抗菌加工をしないことになっています。
1-2.抗菌加工製品
製品の表面の細菌を繁殖させないように加工された製品を「抗菌加工製品」と言います。
JIS(日本作業規格)では、加工されていない製品の表面と比較した時に細菌の増殖割合が1/100以下である場合、該当製品に抗菌効果が認められます。
日本は高湿度で、高頻度の換気を必要としています。
つまり、細菌が増殖しやすく、カビが発生しやすい生活環境なのです。そのため、清潔に保つ意識が古くから生活に根付いてきました。
近年のコロナ禍によって抗菌意識が広まり、細菌に対する恐怖心が日本全土で高まりました。特に日本人は世界でも突出して清潔志向が強く、菌に対する防止策もありとあらゆるものがあります。
ふだんよく手にする日用品にも、抗菌加工製品が開発されるなどして以前から広く展開されてきました。
まな板をはじめ、包丁などのキッチン用品、そして家電や、建物や公共交通機関などのあらゆる設備に抗菌加工が施されるようになり、その数はここ数年で一気に増えました。
抗菌加工製品の市場規模はすでに、1兆円超えになっていると言われています。
抗菌加工された製品は、製品表面についた細菌の増殖を抑える効果があるため、人の手に触れるものを抗菌加工品に置き換えることで、細菌による汚染の広がりを抑える事ができます。さらに、抗菌加工された製品では、「汚れ」「カビ」「ぬめり」などの抑制効果も期待できます。
菌とウィルスは違う。抗ウィルス加工とは
抗菌とともによく聞くのが、抗ウィルス。実はこの二つは似て非なるものだということをご存知でしょうか。
なぜかというと、菌とウィルス、どちらも人の目には見えないサイズの微生物という点では同じですが、実はこの二つは大きく違うのです。 例えば大きさを比べてみると、菌の方がかなり大きく、ウィルスは菌の100~1000分の1程度の大きさしかありません。
菌の方は、学生時代にお世話になったような光学顕微鏡でも観察できますが、ウィルスは小さすぎるので、研究所などにあるような電子顕微鏡でないと確認できません。
また、増殖方法も異なります。人に害を及ぼす菌や、ビフィズス菌のような人の健康に役立つ菌などはどちらも、適度な水分と栄養があるなど環境が整っていれば、細胞分裂をくりかえして自己増殖します。
しかしウィルスの方は、自分だけでは増殖できません。増えるためには、一旦細胞の中に侵入する必要があるのです。
細胞に入り込み、寄生したウィルスは、その細胞から自分が増殖するための要素を利用して増殖し、結果その細胞を壊して他の細胞に寄生先を移して増殖を繰り返していきます。
このように、大きさも増殖方法も全然違う菌とウィルスなので、「抗菌」とうたっている製品ではウィルスへの効果が期待できないことは容易に想像がつくのではないでしょうか。そして同じように、抗ウィルス製品では抗菌作用までは期待できない、というわけです。
そして、抗ウィルス製品だからといって、世の中に存在する全ての種類のウィルスへの効果を保証するものではありません。
抗ウィルス加工では、特定のウィルスについてフォーカスして不活性化させ、生物の細胞に侵入する機能を失わせる薬剤を添加しています。 JISやSIAA(抗菌製品技術協議会)の規定では、A型インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスのうちいずれか一種以上について、加工されていない製品と比較して、抗ウィルス活性値が2.0以上であれば、抗ウィルス効果があるとしています。
つまり、それ以外のウィルスについての効果までは保証していない、ということなのです。
また、抗ウィルス製品だからと、それを使うことで現在かかっている病気が治ったりするわけではないという点も覚えておくとよいでしょう。
菌とカビも違う。抗カビ、防カビ加工とは
カビは真菌類という菌の仲間ですが、「抗菌」で定義されているような細菌とは違い、酵母などの仲間です。 酵母というと、食品をおいしく加工できるもののイメージがありますが、種類によっては食品を腐敗させ、そのまま食べると人体に悪影響があるものも存在します。 カビを抑える商品として、「抗カビ」や「防カビ」と明記された製品がたくさん販売されています。しかし、この2つには特に大きな違いはないと考えてよいでしょう。
どちらも、カビの発育阻害分子を含ませる加工がされている点では同じで、SIAA(抗菌製品技術協議会)で定めた基準をクリアしている製品になります。
抗菌、抗ウィルス、抗カビ・防カビは、加工に使用する薬剤が違う
清潔に過ごすために販売されている、様々な対策グッズ。しかし、人体に影響を及ぼすとされる菌やウィルス、カビは、それぞれたくさんの種類が存在します。
抗菌、抗ウィルス、抗カビ・防カビは、全ての種類の雑菌やウィルスなどに効果があるわけではありません。特定の菌、ウィルス、カビなどに対して、それぞれに効果がある薬剤で加工し、効果を期待できるものです。
つまり、抗カビや防カビ製品でカビ以外の細菌やウィルスへの効果は期待できませんし、抗菌製品ではカビやウィルス対策まではできませんし、これらの対策済みグッズでも、対応できない細菌やウィルス、カビなどが存在することを覚えておくとよいでしょう。
抗菌、抗ウィルス、抗カビ・防カビの効果は永遠ではない
抗菌、抗ウィルス、抗カビ・防カビ効果は、製造されてから永遠に続くとまでは保証されていません。
使い続けるうちにコーティングされた膜がすり減り、効果が減少してしまう事もありますし、繊維であれば洗濯を繰り返すことでわずかずつでも効果は薄れていきます。
抗菌グッズなど、製品に頼りすぎてしまうのは危険です。定期的な抗菌加工を行うのが効果的です。
その他にも日ごろから、手洗いやうがいをする、こまめに掃除をするなど、清潔を保ち、菌やカビ、ウィルスの数を小まめに減らす努力をしておくことがもっとも大切と言えるでしょう。
除菌で清潔習慣しよう!
ここまで、抗菌製品について注目し、ご紹介してきました。
しかし、量販店には、抗菌グッズだけでなく、「除菌」をうたう製品もたくさん販売されていますよね。
インフルエンザやコロナなどで注目される、ウィルスや菌。量販店では、アルコールスプレーやウェットティッシュなど、さまざまな除菌グッズを扱っています。ことばも商品もいろいろあって、迷ってしまうという方。
そもそも「除菌」とは、どんな効果のことをさすのか、一緒におさえておきましょう。
2-1.除菌と殺菌は、ほぼおなじ
除菌とは、菌やウィルスなどの微生物を取り除くこと。
除菌効果をうたうアルコールスプレーなどは、使うことでその場のウィルスや菌を取り除いて減らす効果が期待できます。
もちろん、取り除く過程で菌やウィルスが死滅したり、また拭き残しなどで残ってしまったものもあるでしょうが、「除菌」では、どんな菌やウィルスをどこまで減少させるかについて、きちんとした定義はないのです。
そのため、少しでも減らすことができれば、除菌効果がある、と言ってよいことになっています。この点はよく似たことば、「殺菌」と同じです。
では、殺菌と除菌は、どのように使い分けられているのでしょうか?
2-2.医薬品・医薬部外品で使えることばは「殺菌」、それ以外の製品で使えるのは「除菌」
殺菌も除菌も、取り除けなくても、そして殺さなくても、とにかく菌やウィルスなどの微生物の数を減らすことができれば使うことができることばです。
しかし効果が同じでも、実は表示できる製品が異なっています。薬事法により、医薬品・医薬部外品では「殺菌」ということばを使えますが、それ以外の製品ではそのことばの表示が禁止されているため、代わりに「除菌」が使われているというわけなのです。
そう聞くと、「除菌」ということばの重みが小さく感じられてしまうかもしれませんが、除菌は除菌で洗剤・石けん公正取引協議会で自主基準が設けられているのです。
いわく、「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を有効数減少させること」。
どういうことかというと、「除菌」を名乗るには、その製品、たとえばアルコールスプレーをテーブルにふきかけたときに、テーブル上に残ってしまった黄色ぶどう球菌や大腸菌の値が協議会の定める評価基準値をクリアしている必要があるというわけです。
したがって「除菌」は「殺菌」と同じくらい、確固たる表示と言えるでしょう。
ただし、「除菌」が対象としているのは、黄色ぶどう球菌や大腸菌など、限られた菌です。全ての菌に対しての効果を保証しているわけではないということは押さえておきたいですね。
なお、「除菌」をうたう製品には、除菌マークがついているものが多いのですが、アルコールスプレーのほか、洗剤、ジェル、ウェットシートなど、様々な雑貨がラインナップされています。
殺菌とは、菌を殺すこと。では滅菌との違いは?
「殺菌」は文字通り、菌を殺すことです。もちろん、菌だけでなくウィルスも含まれます。
しかし、殺す菌やウィルスの数について明確な定義は特に定められていません。
そこで、医学領域では「殺菌」ということばはあまり用いられず、「滅菌」の方が一般的に使われています。
「滅菌」の方は、あらゆる菌(およびウィルス)を殺し減少させる行為を意味し、菌やウィルスなどが存在する可能性を可能な限りゼロに近づけることを言うので、殺菌よりも強い意味合いで使われています。
今まで取り上げてきた、「抗菌」や「除菌」は、製品加工や付加価値としての用語でしたが、「殺菌」や「滅菌」は、どちらも人がものを消毒する行為そのものをさしていると言ってよいでしょう。
では、「殺菌」と「滅菌」。この違いについて、最後にご紹介します。
3-1.医療現場で使われるのは、滅菌
例えば病院では「手術器具を滅菌する」というように、「滅菌」する必要性や目的があるため、「殺菌」よりも「滅菌」という言葉の方が一般的に使われています。
滅菌の具体的な方法としては、熱湯や蒸気などの熱をつかう方法や、電磁波やガス、目の細かいフィルターでろ過するなどがあげられます。
3-2.「殺菌」は市販薬などで使える表現
「滅菌」が菌やウィルスを減らす行為をさすのに対し、「殺菌」は医薬品などの商品で使えることばです。
薬機法では、商品に「殺菌」と表示してよいとされているのは、消毒剤や薬用石けんなどのような医薬品や医薬部外品のみ、とされています。
それ以外の商品、例えばアルコールスプレーや洗剤などには「殺菌」ということばは使うことができません。
代わりに、各メーカーは「除菌」ということばを使うことが多いです。認可・許可されていない製品ではあるけれども、同じような働きがあると企業が判断した製品には「除菌」という表現を用いています。
3-3.殺菌、除菌、滅菌、抗菌、、、効果が高いのは結局どれ?
菌やウィルス対策には、殺菌や滅菌だけでなく、抗菌や除菌など、様々なことばがついてまわります。
ことばがいくつも存在するのは、菌やウィルスが目には見えない非常に微細な生物であるため、消毒や殺菌を行っても、どこまで減らすことができたのか、あとどのくらい残っているのかについて、非常に把握しにくいためでもあります。
菌やウィルスなどの微生物が、完全に殺滅、除去された状態を表す言葉に「無菌」があります。無菌とは、「定められた方法で対象微生物が検出されないこと」ですが、これでも、無菌とされた空間に本当に完全に菌もウィルスも除去できていることを確認し、保証することは誰にもできないのです。
コロナ禍などで、清潔さを保つことを今まで以上に求められるようになった昨今。量販店で対策グッズを探すと、殺菌、除菌、滅菌、抗菌、消毒などのことばが何度も目に入ります。
しかし、非常に小さな生物であるウィルスや菌を完全になくすことを保証できる手段はこれらの中にはありません。でも、あえて効果の高い順に並べるとしたら、このようになります。
滅菌 > 殺菌・除菌 ・消毒> 抗菌
あくまでも目安ですが、商品を手に取るときの参考にしていただければ幸いです。
それぞれの意味を適切に理解して、目的に合った表示の対策やグッズを使い分けること。
また、効果を正しく得るために、十分に手洗いをしたり、消毒を心掛けるなどして、あらかじめ菌やウィルスの数を減少させておくことが大切です。
まとめ
コロナ禍によって菌に対する防御策はたくさん増えました。
その中でも、生活の中でいかに過ごすかがポイントとなってきています。
しかし、ついつい忘れがちな対策を効果的なコストパフォーマンスとして考えるのであれば、抗菌は非常に効果的です。